ルクスは一歩前に出て、静かに口を開いた。

「俺の名はルクス。北方の僻地に生まれ育った剣士だ。その地では誰一人として俺の名を知る者はいない…だが――」

彼は胸を張り、胡桃を真っ直ぐに見据える。

「今ここで、その名を刻もう。胡桃、俺と決闘せよ！」

広間に緊張が走る中、甘雨は小さく微笑み、モナは冷ややかに目を細める。 一方で胡桃は――大きな欠伸をして、眠たげな声でぼそりと呟いた。

「……えー、今？　眠いんだけど。」

ルクスは挑発するように声を張り上げた。

「どうした胡桃？　俺との決闘を受けるのが怖いのか？　その程度なのか？」

その言葉を聞いた瞬間、モナの眉がぴくりと動く。彼女は鋭い目でルクスを睨みつけ、冷たい声を放った。

ルクスは胡桃の言葉に一瞬たじろいだが、すぐに顔を歪めて叫んだ。

「ふざけるな！　俺を侮辱しているのか！？　眠いだと……それで剣士を前にできると思っているのか！」

彼の剣先が震え、広間に緊張が走る。

その時、モナが一歩前に出て、冷ややかな笑みを浮かべながら言い放った。

「滑稽ね。ここに来て胡桃様に決闘を挑んだのは、あなただというのに。眠いと言われて怒るなんて、おかしくない？」

その声は氷のように冷たく、広間の空気をさらに張り詰めさせた。

ルクスはしばらく沈黙した後、深く息を吐き、剣を収めた。

「……確かにその通りだ。悪かった、胡桃。どうやら来る時を間違えたようだな。」

彼は胡桃を鋭く睨み、言葉を続ける。

「だが次に会う時は――覚悟しておけ。その時こそ、お前に本気で挑む！」

そう言い残し、ルクスは踵を返し、広間を後にした。

それから一週間が過ぎた。 だがルクスの耳に届くのは、胡桃が眠いだの、忙しいだのといった言い訳ばかりだった。

ついに彼の我慢は限界に達し、怒りを露わにして槍神武術宗門の大広間へと踏み込んだ。

「もう十分だ、胡桃！　一週間も待ったが、聞かされるのは言い訳ばかり……！」

彼は剣を抜き、鋭い眼光で胡桃を睨みつける。

「今度こそ逃さない！　決闘を受けろ！」

広間に走るのは、これまでにない緊張と殺気であった。